お仕事中に履いている靴に、みなさん気を遣っていますか?支給されたナースシューズや、機能が整っていない靴を履いていて、身体の不調に苦しんでいませんか?足元のトラブルは身体の不調に繋がる場合があります。この記事では、「靴と足のケアを見直して快適なワークライフを」をテーマに連載でお届けしていきます。
前回は、【理学療法士が教える】立ち仕事をする看護師のあなたに最適な靴の選び方【導入編】として,自分に合った靴の見つけ方についてお伝えしました.
図2.芯を入れて補強されている靴を選びましょう
足のMP関節と呼ばれる部分が、つま先で立った時や、歩行時の蹴り出しの際に反る部分になります。靴には、MP関節が反る動きをスムースにして歩きを妨げないように、靴底部分が工夫されているものがあります。一枚板のような靴底の靴を履くと、いつも以上に足が疲れるという経験がある方もいるかもしれません。それは、MP関節を反らせるために無駄な力を使いつづける為に生じています。
靴を選ぶ際は、
を必ず確認するようにしましょう。
シューズを実際に履いて、しっかりと踵を合わせた上で、MP関節の位置とシューズの曲がる位置が合致しているか、蹴り出しの際に足と靴に不快を感じる部分はないか、必ず確認してみましょう。
前回の記事で、人のつま先は大きく3種類に分かれるとお伝えしました。実はこの部分が一番盲点で、靴の形と足の形が合っていないケースは意外と多くみられます。例えば、ご自分の足は親指が一番長いのに、靴はラウンド型を選んだとしましょう。そのまま歩いていると、親指は内側に押し出され、外反母趾の要因になる場合があります。サイジングにも大きな影響を与えますので、必ず足と靴を見比べて、商品を選ぶようにしてください
靴には、図の通り、「ミッドソール」と呼ばれる部分と、「アウトソール」と呼ばれる部分があります。ミッドソールは、樹脂をスポンジ化した軽量素材のEVAが使われていることが多く、衝撃緩衝の役割を担っています。部分的にGELや空間を設置することで、よりクッション性を高めている靴もあります。靴によっては、靴底の内側と外側で素材の硬さを調整している靴もあります。
このように、靴には様々な工夫が施されていますが、いずれも消耗品です。歩行距離や使用環境によって経年劣化し、知らず知らずのうちにクッション性やサポート力が低下していきます。靴は消耗品と理解し、半年から一年で必ず見直していきましょう。
ちなみに私たちは、靴の寿命を知るための手段として、同じ靴を二足購入し、半年後にもう一足を使い始める方法をお勧めしています。半年履いた靴と新品の靴で、疲労感や身体症状がどのように変化するかをモニタリングすることで、その靴が寿命を迎えているのか否かがある程度分かります。
ここからは、私が皆さんに必ずお伝えしている、靴の履き方で押さえておきたいポイントを4つご紹介します。
病棟や施設の業務時は、靴を脱ぎ履きする場面も出てきます。いちいち靴紐を結び直していられないと、踵部分を踏み潰して靴を履いてしまう場面もよく見かけます。前述した通り、靴にはヒールカウンターやヒールカップという機能が搭載されていますので、なるべく踵部分は踏み潰さないように心がけましょう。
靴を脱ぎ履きする際、毎回靴紐を結び直す時間が無い、面倒臭いから、結局踵部分を踏み潰してしまうという方も少なくありません。その問題を解決する為に、ヒールカウンターが入っていない靴や、そもそも踵がない靴を履いて、足や腰のトラブルに繋がっているケースもよく見かけます。利便性と機能性を両立させる為に、伸びる靴紐を提案する場合もあります。もちろん、靴を脱ぎ履きする度にしっかり靴紐を結ぶことが理想ですので、脱ぎ履きする場面が多い時は伸びる靴紐、脱ぎ履きする場面が少ない時は通常の靴紐など、場面ごとに使い分けられると良いと思います。
靴の脱ぎ履きの度に、靴紐をしっかり結び直すのが、足と靴の機能を100%引き出すポイントであることは確かです。しかし、病棟業務では頻繁な靴の脱ぎ履きがつきものですし、靴紐を結び直す時間が確保しにくいという事も分かります。そんな方には、ベルトタイプの靴をお勧めするケースもあります。簡単に脱ぎ履きすることが出来るので、是非一度試してみてください。
靴のフィッティングをしていると「つま先がゆったりしている靴が良い」と相談を受けることがあります。前回の記事で、靴の先端と足指の先端に、0.5cm程度の余裕があることが望ましいとお話しさせて頂きました。それ以上の余裕があると、歩いている時に靴の中で足が遊んでしまい、足の骨の配列が乱れ、扁平足や外反母趾だけでなく、足底筋膜炎や各種腱炎などに繋がる場合があります。長時間の立ち仕事で浮腫みが生じるからと、ゆとりのある靴を選ぶ方も少なくありません。その場合は、靴紐で調整することで多少の余白を作ることができますし、足長や足囲は、負担のかかり方やケアの仕方で変化します。ですので、オーバーサイズの靴を選ぶことはなるべく避けましょう!
私は13年間、急性期病棟から療養病棟、在宅リハビリまで、様々な現場・様々な職種の方とお仕事をしてきました。理学療法士という立場上、身体の悩みについてご相談いただく機会も多く、その激務を如何に支えられるかを考えていました。その解決策の一つとして、病院や施設にお伺いして、シンデレラサイズのシューズをご提案する「理学療法士がいる靴屋さん」というサービスを展開しています。ご自身の足や身体の特徴に合わせるだけでなく、職場環境や職務内容に適したナースシューズをご提案し、「足の疲れが軽減した」「腰痛が少なくなった」などご好評の声を頂いております。もし靴や足のことにお困りの方や、スタッフの健康を支えたい事業主様にこの記事と想いが届きましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
1)究極の歩き方 アシックススポーツ工学研究所
2)足と靴の科学 アシックススポーツ工学研究所
3)足と靴の在り方 鈴木良平 日本義肢装具学会誌Vo1.9No.3(1993)
4)人の足と形態変化 市川将 バイオメカニズム学会誌,Vol. 43,No.2(2019)
5)観察による歩行分析 医学書院