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【理学療法士が教える】立ち仕事をする看護師のあなたに最適な靴の選び方【導入編】

執筆者:新田 智裕 株式会社NITTA JAPAN代表

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お仕事中に履いている靴に、みなさん気を遣っていますか?支給されたナースシューズや、機能が整っていない靴を履いていて、身体の不調に苦しんでいませんか?足元のトラブルは身体の不調に繋がる場合があります。この記事では、「靴と足のケアを見直して快適なワークライフを」テーマに連載でお届けしていきます。

自分に合った靴とは?

意外と難しい⁉️ あなたに最適な「靴」の見つけ方

医療従事者のほとんどの方が「立ち仕事」に属する働き方をされていると思います。「立ち仕事」をしている際、地面に接地しているのは「靴」だけです。靴の機能が心許なかったり、ご自身の足に合っていない靴を履いていることで、足や腰の不調に繋がっているケースも多々経験してきました。
理学療法や義肢装具学的な研究においても、自覚している靴サイズと、実際履いている靴サイズが一致している方は37%だったという報告(1)もあり、いかに「本当に自分に合った」靴を履いている人が少ないかが分かります。 スポーツ用品店のPOPや靴の記事を見ると、「自分に合った靴を選びましょう」や「クッション性の高い靴を履きましょう」など、抽象的な内容しか記載されていない場合があります。その方法が分からないから検索してるのに...と思うこともありますよね。
そんなお悩みについて、これまでに数百足の靴販売実績と、ソール調整実績を持つ理学療法士の筆者が、今日から使える知識と技術をお伝えします。この記事では「自分に合った靴の選び方」と「足の基本的な知識」が身につきますので、ぜひ最後までご覧いただき、快適なシューズライフとワークライフをお過ごしください!

足の構造と機能

人が一生で歩く距離は19万Kmとも言われており、これは地球約4周分に相当します。歩行中の一歩の衝撃は、体重の約1.25倍になりますが、多くの骨と関節・細かな筋肉・靭帯が互いに協調して衝撃を吸収しています。衝撃吸収機構の一つとして、皆さんもご存知の「足のアーチ構造」があります。 アーチ構造と聞くと「土踏まず」のことを思い浮かべる方が多いと思います。
これは内側縦アーチという大切な構造ですが、実は足にはその他にも、外側縦アーチと横アーチも存在し、大きく3つのアーチで構成されています。3つのアーチがあることで、足の筋肉や関節は正しく動き、衝撃を吸収するクッションの役割を担うことができるようになります。皆さんも一度ご自身の足に3つのアーチがあるか、確認してみてください。

足は3つのアーチ構造がある。体重をかけていない時とかけている時、両方でアーチ構造を確認してみてください。

足は3つのアーチ構造がある。体重をかけていない時とかけている時、両方でアーチ構造を確認してみてください。

アーチ構造の乱れは身体的不調に繋がる可能性

アーチ構造の乱れと、膝痛や腰痛などの身体的不調について、多くの研究でその関係性が報告されております。著者も臨床経験の中で、足の機能を取り戻すことで、膝痛や腰痛だけでなく、頭痛や肩こりなどが解決するケースも経験してきました。
アーチの高さが変われば、機能的な足の長さにも影響を与えますので、姿勢が左右不均衡になったり、歩き方もバランスが悪くなったりすることで、結果的に不調の要因となるケースが散見されます。このアーチ構造の乱れは、「自分の足に合っていない靴を履いている」ことで、大いに助長してしまう可能性があるのです。

靴のサイジング

アーチ構造が乱れていて、かつ自分に合った靴を履いてない状態を、筆者は「空気の抜けたタイヤで走行する車」と想定します。ホイールだけで走っていると、衝撃は大きいですし、まっすぐ走ったり、うまく曲がることもできません。そんな状態で走行を続ければ、フレームも歪んできますし、各所にダメージが加わってしまうことは容易に想像できますね。

足の形と靴の形を見比べる

まず最初にやることは、足の形と靴の形を見比べることです。前述の通り、足の形は十人十色。親指が一番長いタイプが「エジプト型」、示指が一番長いタイプが「ギリシャ型」、足の指の長さが概ね一緒のタイプが「スクエア型」と分類されています。
エジプト型であれば親指が一番長い靴を、ギリシャ型の足であれば示趾が一番長い靴を、というように、足に合った靴の型から選んでいきましょう。よくよく見てみると、靴によってつま先のタイプやデザインが異なっていることに気付くはずです。
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「両足履いて歩く」までが試し履きのワンセット

「私はいつも〇〇センチだから〜」と、安易にサイズを選んでいませんか?実は靴には「捨て寸」と呼ばれる余分な尺が用意されています。捨て寸はブランド毎だけでなく、同じメーカーの型違いでも異なっているため、サイズ感が違ってきます。また、足の形状が左右で異なる方もいますので、靴を買う時は、必ず両足で試し履きをして、かつ数十歩は歩いてみるところまでがワンセットと考えてください。

インナーソールを外して、足に合わせて直接確認

前述の通り、多くの方の足は体重をかけるとアーチが若干下がり、足長が長くなります。座った状態でジャストフィットだったとしても、歩くときには靴がキツいというケースも少なくありません。私がお勧めするサイズチェック方法として、インナーソールが外せる靴の場合は、外したソールの上に足を置いてみましょう。ソールの形状と足の形状に大きな違いがなければOKです。
また左図のように足とソールの先端に、5mm程度の余裕があるサイズの靴を選ぶと、サイズ感がちょうど良い具合になる人が多いです。なお一部商品で、ソールが外れない商品もありますので、無理やり取り外してお店に迷惑をかけないようにしてくださいね!

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左図のように、つま先とソール先端の間に、指一本分くらいの隙間が確保できるサイズが良いです。右図のようにサイズが大きすぎると、足の構造を乱す要因になる場合があるので注意が必要です。

足と靴の横幅(ワイズ)もしっかり確認を!

「本当は23cmがちょうど良さそうだけど、横幅が狭いから23.5cmにしました」というように、横のサイズが合わないからサイズアップしたというケースも散見されます。実は足の横のサイズ(ワイズ)は「E」と表され、Eの数が大きいほど幅広タイプの靴になります。
靴のワイズは、靴箱やタグに記載されていないことが多いので、メーカーのホームページで検索するか、スポーツ用品店のスタッフに聞いてみるのが一番近道です。またご自身の足のワイズに関しても、測定をしてくれるスポーツ用品店・専門店などもありますし、それでもお困りの方はいつでもBALENAまでお問い合わせください。

おわりに

今回は足や靴の機能と選び方について、理学療法士目線で紹介させて頂きました。立ち仕事で一番酷使されるのは「足と靴」です。何も高価な靴を購入する必要はありません、ご自身の足に合った靴を選び、正しく履いて仕事をすることだけで、状況は大きく変わります。お近くの専門店でお悩みが解決しなければ、いつでも著者までご相談下さい。BALENAでは、医療従事者を足元から支えるべく、病院やクリニックの従業員様向けて福利厚生シューズ&ソール調整サービスもご提供しております。看護師さんをはじめとする医療従事者の皆様から大変ご好評いただいておりますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

https://studio-balena.com/

 

次回は、靴の機能と選び方、ご自身の足とのマッチングについてお届けします。

出典

1)富田義人(2019).地域在宅高齢者における転倒恐怖感と日常生活活動との関連 日本公衆衛生雑誌 2019; 66(7): 341-347.

2)長谷川正哉(2016).「自覚する」靴サイズと「着用する」靴サイズ、「足型に基づく」靴サイズの相違
第48回日本理学療法学術大会 抄録集 Vol.40 Suppl. No.2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2012/0/2012_48101851/_article/-char/ja

3)村野 勇足(2022) 関節拘縮の評価と運動療法- 運動と医学の出版社

 

目次

    執筆者について

    新田 智裕
    新田 智裕
    2007年〜2019年、青葉さわい病院・リハビリテーション科に勤務。スポーツ選手からシニアまで幅広い分野のリハビリテーション、スポーツ選手のコンディショニングに従事。日本栄養士会理事の田中弥生教授と共同で、食とリハビリに関する研究活動、講演活動も継続している。 2019年12月〜横浜市青葉区(たまプラーザ駅)にて、Studio & Cafe BALENA(バレーナ) をOPEN。「食と運動を通じてあなたを健康に」をコンセプトにシニア向けデイサービス事業、および全世代を対象とした自費リハビリ&栄養相談事業を展開中。また、高齢者向けの健康リハビリ体操動画を、YouTubeを通じて多数配信している。地域住民の身体の悩みを、「ワンストップ」で「根本的」に解決するために 多彩なサービスを提供している。
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