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【理学療法士が教える】立ち仕事をする看護師のあなたに最適な靴の選び方【実践編】

執筆者:新田 智裕 株式会社NITTA JAPAN代表

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お仕事中に履いている靴に、みなさん気を遣っていますか?支給されたナースシューズや、機能が整っていない靴を履いていて、身体の不調に苦しんでいませんか?足元のトラブルは身体の不調に繋がる場合があります。この記事では、「靴と足のケアを見直して快適なワークライフを」をテーマに連載でお届けしていきます。

前回は、【理学療法士が教える】立ち仕事をする看護師のあなたに最適な靴の選び方【導入編】として,自分に合った靴の見つけ方についてお伝えしました.

知っておいて欲しい、靴の機能のポイント4選

 日本人女性の足は、男性と比べて、足は細く、甲は低く、くるぶしは男性よりも低い構造となっています。靴自体も、男性用と女性用で性別による特性を反映したものになっているものもあります。また、足の機能は50歳を境に大きく変化すると言われており、若年者用と高齢者用では、靴の構造や機能が異なってきます。あなたの身体に合うだけでなく、年齢や身体機能も考慮して靴を選ぶことが、末長く健やかに暮らし、業務を遂行していくためのキーになります。本章では、靴選びのためのポイントを4つお伝えします。

踵がしっかりした靴を選びましょう


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実は多くの成人日本人の踵は図1の通り、踵の上部が少し内側に倒れている「外反位」となっています。静止して立っている時の外反角度は、概ね2度と言われています。踵が必要以上に外反する現象を「オーバープロネーション」と言い、扁平足や外反母趾、各種足症状を誘発する場合があります。シューズには、この「オーバープロネーション」を抑制するための「ヒールカップ」「ヒールカウンター」という構造があります(図2)。  ヒールカップは、靴の踵部分にあるくぼみのことで、踵をしっかりと支え、歩く時に踵がしっかりとコンタクトできるように誘導される踵は上部が内側に傾斜するように設計されています。一方ヒールカウンターは、靴の踵内側部分にある固い素材の部分で、踵が過度に外反しないようにサポートしてくれる機能があります。この機能が備わっていない靴ですと、ご自身の筋力で足を支え続けることになります。そのため、長時間立ったり歩いていると、足にどんどん疲労が蓄積してしまい、足の裏が痛くなるなどの症状に繋がる場合があります。踵の機能がしっかりしていて、かつご自分の踵にフィットする靴を選ぶのが、靴選びの第一歩です。

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図2.芯を入れて補強されている靴を選びましょう

つま先がしっかり反ってくれる靴を選びましょう


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足のMP関節と呼ばれる部分が、つま先で立った時や、歩行時の蹴り出しの際に反る部分になります。靴には、MP関節が反る動きをスムースにして歩きを妨げないように、靴底部分が工夫されているものがあります。一枚板のような靴底の靴を履くと、いつも以上に足が疲れるという経験がある方もいるかもしれません。それは、MP関節を反らせるために無駄な力を使いつづける為に生じています。
靴を選ぶ際は、

  • ① つま先(MP関節)の部分がしっかり反ってくれること
  • ② ①の部分とご自身のMP関節の位置が合致していること

を必ず確認するようにしましょう。
シューズを実際に履いて、しっかりと踵を合わせた上で、MP関節の位置とシューズの曲がる位置が合致しているか、蹴り出しの際に足と靴に不快を感じる部分はないか、必ず確認してみましょう。

     

image5-1図3 MP関節と、靴の反り易い部分が一致していると良い

つま先の形と、靴の先の形が合ったものを選ぶ

前回の記事で、人のつま先は大きく3種類に分かれるとお伝えしました。実はこの部分が一番盲点で、靴の形と足の形が合っていないケースは意外と多くみられます。例えば、ご自分の足は親指が一番長いのに、靴はラウンド型を選んだとしましょう。そのまま歩いていると、親指は内側に押し出され、外反母趾の要因になる場合があります。サイジングにも大きな影響を与えますので、必ず足と靴を見比べて、商品を選ぶようにしてください

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靴は半年〜1年毎に見直しましょう

靴には、図の通り、「ミッドソール」と呼ばれる部分と、「アウトソール」と呼ばれる部分があります。ミッドソールは、樹脂をスポンジ化した軽量素材のEVAが使われていることが多く、衝撃緩衝の役割を担っています。部分的にGELや空間を設置することで、よりクッション性を高めている靴もあります。靴によっては、靴底の内側と外側で素材の硬さを調整している靴もあります。

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このように、靴には様々な工夫が施されていますが、いずれも消耗品です。歩行距離や使用環境によって経年劣化し、知らず知らずのうちにクッション性やサポート力が低下していきます。靴は消耗品と理解し、半年から一年で必ず見直していきましょう。

ちなみに私たちは、靴の寿命を知るための手段として、同じ靴を二足購入し、半年後にもう一足を使い始める方法をお勧めしています。半年履いた靴と新品の靴で、疲労感や身体症状がどのように変化するかをモニタリングすることで、その靴が寿命を迎えているのか否かがある程度分かります。

病棟業務が楽になる?靴の履き方のポイント4選!

ここからは、私が皆さんに必ずお伝えしている、靴の履き方で押さえておきたいポイントを4つご紹介します。

踵部分を踏み潰すのはNG!

 

病棟や施設の業務時は、靴を脱ぎ履きする場面も出てきます。いちいち靴紐を結び直していられないと、踵部分を踏み潰して靴を履いてしまう場面もよく見かけます。前述した通り、靴にはヒールカウンターやヒールカップという機能が搭載されていますので、なるべく踵部分は踏み潰さないように心がけましょう。

靴紐を工夫する

靴を脱ぎ履きする際、毎回靴紐を結び直す時間が無い、面倒臭いから、結局踵部分を踏み潰してしまうという方も少なくありません。その問題を解決する為に、ヒールカウンターが入っていない靴や、そもそも踵がない靴を履いて、足や腰のトラブルに繋がっているケースもよく見かけます。利便性と機能性を両立させる為に、伸びる靴紐を提案する場合もあります。もちろん、靴を脱ぎ履きする度にしっかり靴紐を結ぶことが理想ですので、脱ぎ履きする場面が多い時は伸びる靴紐、脱ぎ履きする場面が少ない時は通常の靴紐など、場面ごとに使い分けられると良いと思います。

ベルトタイプの靴にするという選択も

靴の脱ぎ履きの度に、靴紐をしっかり結び直すのが、足と靴の機能を100%引き出すポイントであることは確かです。しかし、病棟業務では頻繁な靴の脱ぎ履きがつきものですし、靴紐を結び直す時間が確保しにくいという事も分かります。そんな方には、ベルトタイプの靴をお勧めするケースもあります。簡単に脱ぎ履きすることが出来るので、是非一度試してみてください。

「ゆったり履きたいから大きいサイズを選ぶ」 はNG!

靴のフィッティングをしていると「つま先がゆったりしている靴が良い」と相談を受けることがあります。前回の記事で、靴の先端と足指の先端に、0.5cm程度の余裕があることが望ましいとお話しさせて頂きました。それ以上の余裕があると、歩いている時に靴の中で足が遊んでしまい、足の骨の配列が乱れ、扁平足や外反母趾だけでなく、足底筋膜炎や各種腱炎などに繋がる場合があります。長時間の立ち仕事で浮腫みが生じるからと、ゆとりのある靴を選ぶ方も少なくありません。その場合は、靴紐で調整することで多少の余白を作ることができますし、足長や足囲は、負担のかかり方やケアの仕方で変化します。ですので、オーバーサイズの靴を選ぶことはなるべく避けましょう!

おわりに

私は13年間、急性期病棟から療養病棟、在宅リハビリまで、様々な現場・様々な職種の方とお仕事をしてきました。理学療法士という立場上、身体の悩みについてご相談いただく機会も多く、その激務を如何に支えられるかを考えていました。その解決策の一つとして、病院や施設にお伺いして、シンデレラサイズのシューズをご提案する「理学療法士がいる靴屋さん」というサービスを展開しています。ご自身の足や身体の特徴に合わせるだけでなく、職場環境や職務内容に適したナースシューズをご提案し、「足の疲れが軽減した」「腰痛が少なくなった」などご好評の声を頂いております。もし靴や足のことにお困りの方や、スタッフの健康を支えたい事業主様にこの記事と想いが届きましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

https://studio-balena.com/

出典

1)究極の歩き方 アシックススポーツ工学研究所

2)足と靴の科学 アシックススポーツ工学研究所

3)足と靴の在り方 鈴木良平 日本義肢装具学会誌Vo1.9No.3(1993)

4)人の足と形態変化 市川将 バイオメカニズム学会誌,Vol. 43,No.2(2019)

5)観察による歩行分析 医学書院

 

目次

    執筆者について

    新田 智裕
    新田 智裕
    2007年〜2019年、青葉さわい病院・リハビリテーション科に勤務。スポーツ選手からシニアまで幅広い分野のリハビリテーション、スポーツ選手のコンディショニングに従事。日本栄養士会理事の田中弥生教授と共同で、食とリハビリに関する研究活動、講演活動も継続している。 2019年12月〜横浜市青葉区(たまプラーザ駅)にて、Studio & Cafe BALENA(バレーナ) をOPEN。「食と運動を通じてあなたを健康に」をコンセプトにシニア向けデイサービス事業、および全世代を対象とした自費リハビリ&栄養相談事業を展開中。また、高齢者向けの健康リハビリ体操動画を、YouTubeを通じて多数配信している。地域住民の身体の悩みを、「ワンストップ」で「根本的」に解決するために 多彩なサービスを提供している。
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