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雇用の質が生む増収増益のサイクル

執筆者:エピグノ編集部

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 なぜ今「雇用の質」なのか 

医療業界は現在、非常に厳しい経営状況にさらされています。

少子高齢化の加速により、人手不足・採用難が同時に進行し、

現場の負荷は慢性的に高い状態にあります。

さらに、採用市場の競争激化により人材の紹介料や派遣料は高騰し、採用コストは年々経営を圧迫しています。

「人が足りないから採る」という従来の打ち手だけでは、

もはや立ち行かなくなってきているのが実情です。

 

こうした状況に対し、

厚生労働省は

「雇用の質を向上させることが、医療機関の安定経営に向けた好循環を生む鍵である」

と提言しています。

 

ここで重要なのは、どのように実行に移すかです。

「採用で解決する時代は終わった」「定着と生産性が経営を左右する」

これからの病院経営において重要なのは、“人を増やすこと”ではなく、

“今いる人材が辞めずに、最大限力を発揮できる環境をつくること”です。

 そもそも 「雇用の質」とは何か  

「雇用の質を上げる」と聞くと、
多くの方が給与アップや休日数の増加を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、それだけでは本質的な解決にはなりません。


雇用の質の本質とは、「働き続けられる」「力を発揮できる」環境をつくることです。

そのための柱は、以下の4つに整理されます。

  1. 働き方・休み方の改善

  2. 健康増進の支援

  3. 働きやすい環境の整備

  4. 働きがいの向上

この4つをバランスよく改善していくことが、結果的に離職防止と生産性向上を同時に実現します。

 最初にやるべきことは「現状把握」 

多くの現場で見られる失敗は、いきなり施策を打ってしまうことです。
まずやるべきは「現状の可視化」です。

 現状把握:(前半)数値の集計・分析

 以下の指標は最低限押さえる必要があります。

  1. 離職率(職種別・年代別)

  2. 残業時間

  3. 有給取得率

  4. メンタル不調者や休職者の数

  5. 配属ミスマッチの有無

ここで、「どこで離職が集中しているか」を特定します。

同様に残業時間や有給取得率も、 「平均値」ではなく、
部署別・個人別に分析することで、 負担が偏っている箇所が見えてきます。

 

さらに重要なのが、数値同士を掛け合わせて見ることです。

例えば、

  • 残業時間が多い部署ほど離職率が高いのか
  • 有給取得率が低い部署でメンタル不調が多いのか
といったように、因果関係の仮説を立てることがポイントです。

  現状把握:(後半現場ヒアリング

 加えて重要なのが、現場ヒアリングです。

看護師、コメディカル、事務職では、抱えている課題は大きく異なります。
数字だけでは見えない「離職原因となる課題の正体」を把握することが、
すべての出発点になります。

 

そして最後に、因果関係の仮説と現場ヒアリングとを照らし合わせます。

「なぜその部署だけ離職が多いのか」

「なぜその業務に負担が集中しているのか」

この“数字と現場の声のズレ”を埋めることで、打つべき施策の優先順位が初めて明確になります。

 

やみくもに施策を打つのではなく、
「どこに・なぜ課題があるのか」を特定することが、 成果につながる改善の第一歩です。 

 課題が特定できた後の改善に向けた具体ステップ  

 ステップ①働き方・休み方の改善 

現場で最も不満が顕在化しやすいのが、この領域です。

 

🔧具体施策

•    夜勤専従や時短勤務など多様な働き方の導入
•    タスクシフト、業務負荷の分散(医師看護師、看護師事務など)
•    シフト運用の改善(休みの希望を叶える、シフトの公開日を早めて、休日を充実させやすい環境を整える)

 

得られる成果

残業や持ち帰り業務の削減

不満の蓄積や離職の未然防止

 

 ステップ②:健康増進の支援(離職の未然防止)  

医療従事者は、身体的にも精神的にも負担の大きい職種です。
そのため、健康増進の支援は「福利厚生」ではなく、継続的な雇用に必要な「経営課題」です。

 

🔧具体施策

  1. ストレスチェックの定期活用

  2. • 形式的でない面談機会の設計

  3. 夜勤負担の偏り是正

☝️ポイント

重要なのは、「問題が起きてから対応する」のではなく、予防することです。

不調者が出てからでは遅く、現場の負荷はさらに増大します。

予防型のマネジメントへの転換が不可欠です。

 

 ステップ③:働きやすい環境の整備(生産性向上)  

人手不足の中で成果を出すためには、「人に依存しない仕組みづくり」が必要です。

 

🔧 具体施策

  1. 手作業・紙文化のデジタル化
  2. 業務フローの標準化・効率化(AI活用含む)
  3. ツールを活用した情報共有の仕組み化

得られる成果

  1. 業務時間や手間の削減

  2. ミスの減少


ステップ④:働きがいの向上(定着とパフォーマンス)

見落とされがちですが、離職理由の根本には「報われなさ」が存在します。

 

🔧 具体施策

  1. 目標設定や評価制度の明確化

  2. 定期的なフィードバック文化の醸成

  3. キャリアパスの提示

☝️ ポイント

「頑張っても、成長しても評価されない」状態は、確実に離職につながります。
逆に言えば、働きがいがある職場は、給与以上に人を引き留める力を持ちます。

 実行のコツ(失敗しない進め方) 

 雇用の質を向上させるためには「やることが多い」ため、進め方が非常に重要です。

 

成功のポイント

一気にやらない(優先順位をつける)

現場を必ず巻き込む

小さく始めて成功体験を作る

数値で効果を測定する

 

よくある失敗例

  ツールを導入したが、現場に合わず使われない

•  現場の実態を無視した施策で、かえって負担が増える

•  目的が曖昧なまま形だけ整備してしまう

 

ツールや施策を導入すること自体が目的ではありません。
現場に変化を生み、その変化が定着し続けて初めて、施策は成果に変わります。

雇用の質向上が生む好循環

雇用の質向上は、単なる人事施策ではありません。経営そのものに直結する取り組みです。

離職減少 採用コスト削減

人材定着 教育コスト削減

生産性向上 経営改善

医療の質向上 患者の増加による収益UP

 

このような好循環が回り始めると、組織は安定し、クチコミで良い人材が集まるようになります。
良い人材が集まれば、医療の質が高まり、患者や地域からの信頼がより強固なものになり、
結果として経営が安定します。

 

経営が安定すれば、将来に向けてさらなる設備投資や教育投資、
新たな医療サービスの導入などを前向きに進められるようになり、
「選ばれ続ける医療機関」へと進化する未来を描く事ができるようになるのです。

まとめ

これからは、「人が辞めない組織こそが最強の経営資源」になりえる時代です。 
まずは、小さな一歩から。 
現場の課題に向き合うことが、病院経営を改善するための第一歩になります。 

目次

    執筆者について

    エピグノ編集部
    エピグノ編集部
    エピグノ編集部は、医療機関の働き方改善と現場DX推進を専門とする情報編集チームです。国内の看護管理・病院経営領域を中心に、シフト最適化、人材マネジメント、医療DX、業務効率化といったテーマを調査・取材し、現場で役立つ実践的な知見を発信しています。独自の調査データや医療法人へのインタビューをもとに、病院の“いま”を正しく伝えることを使命としています。
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