高齢化が進む日本では近年、認知の低下などによる患者さんの服薬コンプライアンスの低下、残薬の増加などが問題になってきています。
その解決策の一つとして、これまでも薬の一包化が進められてきましたが、2022年度調剤報酬改定よって、複数の薬を一包にまとめるという作業だけではなく、患者さんに合わせた服薬指導やフォローアップを強化することも求められるようになりました。
本稿では、一包化のメリット、デメリットから、一包化の必要性の有無、一包化にするための条件を解説してきます。
一包化について
一包化とは
一包化とは、用法が同じ薬剤を一つの袋に入れ、まとめる調剤方法のことです。
多種類の薬剤を服用する場合やPTP、ヒートから薬剤を取り出しにくい場合などに、必要に応じて一包化を行うことによって、薬剤の飲み忘れや飲み過ぎなどの防止、患者さんの服薬コンプライアンスの向上を図ります。
なお吸湿性が高い薬剤や、遮光が必要な薬剤など、薬剤の特性によっては一包化ができないものもあります。
一包化を行うための条件
一包化を行うときには、薬剤を処方した処方医の了解を得た上で「外来服薬支援料2」(一包化加算)を算定することができますが、算定要件と点数が内服薬の投与日数に応じて変わってきます(1)。
外来服薬支援料2の算定点数
投与日数 | 所定点数 |
1〜7日 | 34点 |
8〜14日 | 68点 |
15〜21日 | 102点 |
22〜28日 | 136点 |
29〜35日 | 170点 |
36〜42日 | 204点 |
43日以上 | 240点 |
算定要件は、2剤以上の内服薬または1剤で3種類以上の内服薬を服用時点ごとに一包化を行なった場合です。
一方、「外来服薬支援料1」とは、服薬管理困難の患者さんや介護者の方が、近隣の保険薬局に薬剤を持参し服薬管理や整理をしてもらうことです。費用は発生しますが、服薬管理の一つとして、一包化が可能になります。
院内処方では一包化されていないケースもあり、薬剤が多種類あって、患者さん本人や介護者が服薬管理困難になるケースや、PTP包装で服薬コンプライアンス不良になる場合もあります。こうした場合は、薬局薬剤師から外来服薬支援制度を患者さんに提案することも可能です。
ただし、外来服薬支援を利用するにあたっては、以下のような一定の要件があります。
- 月に1回のみの利用
- 処方医が治療上の必要性、服薬管理に係る支援の必要性を認めた場合のみの利用
- 必要な服薬指導を行う(薬剤を受け取った薬局での服薬管理が優先になるが十分な服薬管理ができていないと判断された場合に利用のため)
また、外来服薬支援料1の算定点数は185点になります。
2022年度調剤報酬改定前は、一包化加算は調剤料の加算という技術に対しての算定という位置づけでしたが、改定により管理料として算定するため、今後は患者さんに合わせた服薬指導やフォローアップの強化が必要になってくるでしょう(2)。
一包化の必要性
一包化により、薬剤の飲み忘れや飲み過ぎなどが防止でき、服薬コンプライアンスが上がるのであれば、全ての患者さんの薬剤を一包化すれば良いのではないか?と思われる方もいるでしょう。
以下に一包化のメリットとデメリットをまとめました。両者を理解した上で、患者さんにとって最適な調剤を選択する必要があります。
一包化のメリット
一包化の最大のメリットは、患者さんの薬剤の飲み忘れや飲み間違い、飲み過ぎが減ることです。
また一包化する際に、袋に氏名、用法、薬剤名、服用日などを印字することができるため、施設などにいる場合は、介護者の方がPTP包装時よりも管理しやすいという点があげられます。
また、PTP包装のまま薬剤を管理している場合、服用時に間違ってPTP包装も一緒に服用するという事故も発生しています。視力が低下している方や認知症などを患っている患者さんには、一包化して薬剤管理を行うことにより想定外の事故を防ぐこともできます。
PTP包装の中には小児の誤飲を防ぐために、押し出しに力が必要なものがあります。手先に力が入りにくい患者さんの場合は一包化にすることにより、負担軽減にもなります。
一包化のデメリット
一包化を行うためには、薬を包装から全て出し、1つ1つ機械で袋に詰めていく作業があるため、薬の受け渡しに時間がかかってしまいます。また薬剤が外気に触れるため、薬剤の保存期間が未開封時よりも短くなります。
一包化することにより、PTPやヒートから薬剤が出ているため、一目で何の薬なのか判断しづらい状態もデメリットと言えるでしょう。PTP包装の色を頼りに、患者さん本人が症状に合わせてどの薬剤を服用しているか把握している方もいるため、自己管理できる方の場合は一包化せずに管理した方がよいでしょう。
まとめ
今回は一包化について解説してきました。
高齢化社会が進む中、一包化を行うことによる服薬コンプライアンスの改善に期待が寄せられる一方で、服薬指導やフォローアップが必要となってきています。 一包化を行うにあたってのメリット、デメリットを考慮した上で、患者さんにとって一番最適な管理方法、服薬指導が提案できればと思います。
おわりに
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出典
(1)厚生労働省 保険局 医療課
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911825.pdf
(2)武田テバファーマ株式会社
https://www.med.takeda-teva.com/di-net/takedateva/STNT/STNT28.pdf