医療現場の人手不足、「データ」で見える危機
いま、日本の医療現場は慢性的な人手不足に直面しています。
パーソル総合研究所の推計では、2030年までに医療・福祉分野で約187万人の人材が不足する見通し。
団塊世代の後期高齢化を背景に医療需要は増加し続ける一方、
供給側の人材は減少の一途をたどっています。
厚生労働省の将来推計によれば、2025年には最大27万人の看護職員が不足。
しかもその偏在は地域によって大きく、埼玉・東京・大阪など都市圏で特に深刻です。
データが示すのは単なる「量の不足」ではなく、 “現場がもたない”という構造的な問題です。
数字が語る採用難 ― 有効求人倍率の異常値
厚労省職業安定統計によると、医療・福祉分野の有効求人倍率は常に2〜3倍前後で推移しています。
職種別では、看護師2.4倍、医療技術者2.8倍、介護職3.1倍と、
全産業平均(1.1倍台)を大きく上回る水準です。
特に医療事務は2.0倍を超え、「人気職種でありながら採用できない」という逆転現象が起きています。
背景には、業務の多様化・精神的負荷・人間関係などによる離職が指摘されています。
離職率が示す“もう一つの人手不足”
医療・福祉業界の離職率は14.6%(令和5年)。
全産業平均(15.4%)と近い数値ですが、
「入職率(13.6%)」とほぼ拮抗しており、採用してもすぐに辞める構造的課題を抱えています。
特に若年層・既卒看護師では離職率が高く、
看護師の約79%が「辞めたい」と考えた経験があるという調査も。
離職理由の上位は、「人手不足による過重労働」「賃金の不満」。
つまり、人手不足がさらなる離職を生む負のスパイラルが形成されているのです。
国際比較で見る“医師不足”の構造
OECDデータによると、日本の臨床医数は人口1,000人あたり2.4人。
加盟35カ国中28位であり、G7最下位です。一方で、病床数は世界トップクラス。
つまり、日本の医療は「少ない医師で多すぎる施設を回している」構造にあります。
この構造を放置すれば、医師・看護師双方の労働密度が極端に高まることは明白です。
「数が増えても足りない」― 質的な人手不足の正体
看護師総数は増えても現場は忙しいまま。
その理由は、“質的な人手不足”です。
🔹勤務条件のミスマッチ
- 夜勤・フルタイムで働ける職員が減少
- 看護師の高齢化により夜勤継続が困難
- 「夜勤72時間ルール」でシフト作成が複雑化
🔹ケアの高度化と業務量の増加
- 高齢患者増に伴う複合ケア・慢性疾患対応
- 急性期病棟での入退院スパン短縮による書類業務増
- タスクシフトの遅れで看護師が事務業務も抱える
つまり「人数」よりも「負荷」が問題であり、業務設計の最適化とDXによる再構築が不可欠です。
経営データが示すリスク ― 人件費54%、二重苦の構造
医療機関の支出に占める人件費は平均54%。
近年はエネルギー高騰・賃上げ圧力も重なり、経営調査では課題の1位「人件費増加」、
2位「職員確保難」と報告されています。
さらにDX投資の有無が経営格差を拡大。
導入できる病院は人材が定着し、導入できない病院は
過労・離職が加速するという二極化が始まっています。
解決の糸口:データとAIで“人を理解するマネジメント”へ
医療の人手不足は、「採用の問題」ではなく「データの問題」へと変化しています。
現場を支える人を“感覚”ではなく“データ”で理解する仕組みが求められています。
🔹エピグノのアプローチ
株式会社エピグノが提供する「エピタルHR」は、医療機関の人材データの見える化とDX化を実現する国内初の医療特化型プラットフォームです。
- スタッフのスキル・研修履歴・面談内容を一元管理
- AIが勤務条件を考慮して公平なシフトを自動作成
- エンゲージメントサーベイで退職リスクをデータで可視化
- 年間3,700時間超の業務時間を削減し、離職率を1.8%改善
このような仕組みは、「勘と経験」で運営してきた医療マネジメントを科学的に変革する基盤となっています。
人手不足を“データで超える”時代へ
人材確保が難しい時代に必要なのは、「採用強化」ではなく「データ経営」です。
スキル・稼働・モチベーション・評価を可視化し、“正しく配置し、正しく育て、正しく支援する”――。
これこそが、医療現場を持続可能にする唯一の戦略です。
「ヘルスケアに叡智を、ヘルスケアに感動を」 ― 株式会社エピグノ
医療業界の人手不足をデータで理解し、人を中心とした経営へと進化させることが、次の10年の医療を支える鍵になるでしょう。








