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臨床心理士の働きについて紹介します

 

皆さんは臨床心理士がどんな仕事をしているかご存知でしょうか?最近は、ドラマなどでもよく心理カウンセラーが登場しているので、存在は知っている方も多いと思いますが、実際に医療現場でどんなことをしているのかは、あまり知られていないかもしれません

 

本稿では、臨床心理士の具体的な仕事や医療現場における役割などについて紹介します。実際どんなことができるのかについて知っていただくことで、心理士の存在を身近に感じていただけたり、他職種の方との連携に役立てていただければ幸いです。

 

 

保健師の仕事の概要

臨床心理士にはどうやってなる?

臨床心理士になるには、4年生の大学を卒業後、臨床心理資格認定協会の定める臨床心理士指定の大学院を修了する必要があります。大学院では座学だけでなく、実習も積極的に行われています。修了した後に、臨床心理士試験に合格することで資格を取得することができます。

 

 

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臨床心理士資格は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会から認定を受けた資格となっており、30年以上前の1988年に誕生しました。2021年4月1日現在では、38397名の臨床心理士が認定されています。(1

 

また2017年より、国家資格である「公認心理師」も誕生しました。今後ますます、心理士の活躍する場は広がっていくと考えられます。

 

臨床心理士はどんな場所で働いている?

心理士の働く領域は広く、大きく「医療・保健」「教育」「福祉」「司法」「産業」の5つの領域に分けることができます。「教育」の領域では、主に児童・保護者を対象に発達検査や教育相談等を行っています。スクールカウンセラーを配置する学校も増加しています。「福祉」現場は幅広く、児童相談所や心身障害者福祉センター、女性相談センターなど様々な場があります。児童相談所では、虐待相談や療育手帳に関する業務を行っています。また「司法」の領域では家庭裁判所調査官や法務技官として働く心理士、「産業」の領域では企業で働く人へのカウンセリングを行う心理士などが挙げられます。

では、「医療・保健」の領域について詳しくみていきましょう。

「医療・保健」領域での心理士の役割

・病院の精神科や心療内科に勤務し、心理検査やカウンセリングなどを行います。また患者さんが初めて病院に来た際に行われるインテーク面接(病歴や生活史の聴取)を心理士が担うこともあります。

 

・精神科デイやリハビリの場でも一緒に活動したり、話を聞いたりして、患者さんの支援を行っています。芸術療法を用いて患者さんの心身機能の回復をはかったり、SST(社会生活技能訓練)を用いて、人との付き合い方を学ぶことでストレスに対処できるようになるための生活技能を高めたりしていくこともあります(2)。

 

・疾病に関する知識や服薬の効果などを患者さんに分かりやすく伝えたり、家族に対して患者本人とどのように関わっていくべきか考える心理教育的なアプローチを行うこともあります。

 

・ケースカンファレンスへ参加し、医師・看護師・ソーシャルワーカーといった多職種のスタッフと、患者さんへの治療方針について検討を行うこともあります。

 

・精神科領域だけでなく、緩和ケア領域や周産期領域、遺伝医療、糖尿病チーム、小児科医療、高齢者医療に関わることもあります。

臨床心理士はどんな仕事をしている?

では広い領域の中で、臨床心理士は具体的にどんなことをしているのでしょうか?臨床心理士の仕事は、

  1. 心理アセスメント
  2. 心理面接
  3. 地域援助
  4. 研究調査

の4つが挙げられます(3)。

①心理アセスメントとは

「対象者の心理学的特徴を多角的に捉えて、援助戦略につなげること」と考えられています(4)。

例えば、病院において患者さんがうつ病と医師に診断された際に、うつ病と一括りにいっても、その方の置かれている環境やパーソナリティ、社会的資源は様々です。患者さん一人一人の情報を総合的に集めた上で、どのような支援を行うことが適切か考えていきます。一重に心理学的特徴と言っても、様々な視点が考えられます。

 

心理アセスメントを行う際の方法として、面接・行動観察・心理検査といった方法が用いられますが、心理士と聞いて一番イメージを持たれやすいのは心理検査かもしれません。

 

では、心理検査ではどんなことが分かるのでしょうか。心理検査にもさまざまな種類があり、対象者や知りたいことによって、適切な検査が異なります。どのような心理検査を組み合わせていくかに関しても、心理士は医師と共に検討を行います。例えば、パーソナリティの特徴・知能や認知機能の水準・疾患の症状評価などが心理検査によって明らかになります。

 

心理検査の結果は、数値といった分かりやすい結果であらわれることも多く、その結果やあらわれた数字のみが独り歩きしてしまうこともあります。残念ながら心理検査を行ったからと言って、その方のすべてを知ることはできません。大切なのは、結果から分かったことを、どのような支援に生かしていけるか、患者本人と本人を取り巻く人々が考えていくことです。

②心理面接とは

心理カウンセリングや心理療法といわれるものです。心理面接で用いられる臨床心理学的技法には、様々なものがあります。例えば精神分析やクライアント中心療法、認知行動療法、遊戯療法、家族療法、森田療法などなど…。

 

日本の病院では一定の条件を満たせば、認知行動療法が保険適応となっています(5)。認知行動療法では、困っていることがどのような悪循環で起こっているのか、状況・考え・感情・身体の反応・行動に分け、シートを使って整理した上で、対処法を身に着けていきます。

それぞれアプローチの違いや依るべき所は異なりますが、相談にきてくださった方(患者さん)が問題を乗り越えていける力を身に着けられるような手助けを行っていくという点では共通しています。

 

心理面接において、心理士は正しい道筋を指し示す存在ではなく、もちろん話を聞くだけで簡単に問題を解決できる存在でもありません。相談者一人一人の価値観を大切にしながら、どのような道に進んでいくべきか、どんな人生を歩んでいきたいかについて共に考えていく存在であると考えられます(6)。

③地域援助とは

問題や困難を抱えた個人だけに働きかけるのではなく、その人を囲む環境への働きかけや情報整理・関係の調整も行っていきます。病院においては、患者さんの理解や治療方針について、患者さんを取り巻く医療スタッフや家族と共に支援を行っていく必要があると考えられます。

④研究調査とは

心理支援における手法や知識を確実なものにするため、臨床心理士調査や研究活動を実施しています。学会発表や論文執筆などが挙げられます。臨床心理士資格は5年ごとに更新が必要な資格となっており、勉強会や学会の参加を行うことで専門的資質の維持・向上を目指しています。

臨床心理士が医療現場で役立つ場面は?

例1、インテーク面接の場面において

心理士がインテーク面接を行う場合、不安や混乱状態の中、やっとの思いで病院の受診に至る患者さんが、安心感を持てたり、病院に対する期待を持てたりするように、話を聴いていくことを心掛けています。病院に対するはじめの印象は、その後の治療に対するモチベーションに大きく関わっていくからです。また、その中で患者さんの“困っていること”や“医療機関に期待すること”の整理を行っていきます。診察の際に、患者さんが困っていることや病院に望むことをより明確に医師に伝えることができ、その後の治療方針が組み立てやすくなります。

 

 

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例2、見立てと治療方針に関して

患者さんの病態水準や発達段階によって治療方針を検討していくことが必要ですが、“治療をしすぎない”ことが必要な場面もあります(7)。例えば境界例や解離性障害などでは良かれと思って話を聞きすぎることで、かえって関係が複雑化してしまい、治癒を遅延化してしまうこともあります。

他にも、相手の準備ができていない段階で、問題に直面化させることで、心的な負担をかけすぎてしまうことや、疾病利得が患者を支えている場合にも注意を払う必要があります。患者との関係で留意すべき点を心理士が見つけていき、医療スタッフと共有しておくことが患者さんをサポートする上で役立つ場合もあります。

まとめ

臨床心理士がどんなことをしているのかについて紹介してきました。心理士の仕事とその目指している所について少しでも知っていただければ幸いです。

病院において、臨床心理士はまだまだメジャーな存在ではありませんが、患者さんを支える医療従事者の方と共に、患者さんの理解やより良い支援の在り方について考えていきたいと思います。

おわりに

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出典

(1) 臨床心理士とは | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 (fjcbcp.or.jp),2022/04/30 アクセス.

(2)馬場謙一(監修),福森高洋・松本京介(編著) ,「医療心理臨床の基礎と経験」,日本評論社社,2010.

(3)臨床心理士の専門業務 | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 (fjcbcp.or.jp),2022/04/30 アクセス.

(4)津川律子,「精神科における心理アセスメント入門」,金剛出版,2009.

(5)認知行動療法:どんな治療?どこで受けられるの?費用は?どのくらい時間・期間がかかるの? – 株式会社プレシジョン (premedi.co.jp)),2022/04/30 アクセス.

(6)河合隼雄 ,「心理療法入門」,岩波書店,2002.

(7)松田真理子 ,「医療心理学を考える」,晃洋書房,2016.

 

目次

    執筆者について

    大木 知夏
    大木 知夏
    大学院を修了後、臨床心理士・公認心理師の資格を取得。2018年より国立精神・神経医療研究センター病院にて科研費心理士療法士として勤務。臨床研究に携わる中で、臨床研究のコーディネート業務・精神症状評価・認知機能検査等を行っている。患者さんの安心や希望に繋がる働きができるよう日々奮闘中。