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チーム医療とは?良質な医療を提供するために医療従事者がしていること



現在の医療現場では,多職種のメディカルスタッフ(医療専門職)が連携しながら一人の患者さんの治療にあたる,チーム医療が注目されています.

かつては一人の医師が中心となって診療を行っていましたが,チーム医療では,看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法等,医療に関わるさまざま職種が患者さんの病状に応じてチームを組み,意見を交換しながら患者さんの置かれている状況を分析し,患者さんが心身ともに健やか生活が送れるよう,治療とサポートを進めています[1].

チーム医療には,褥瘡(じょくそう)対策チーム,緩和ケアチーム,糖尿病ケアチーム,栄養サポートチーム(NST),救急医療チーム,摂食・嚥下チーム,感染対策チーム(ICT),呼吸ケアサポートチーム,認知症ケアチーム等,さまざまなチームがあります.

では,これらのチーム医療とは,どのような医療で,具体的にどのような活動をしているのでしょう.

 

チーム医療とは

「チーム医療」とは,医師をはじめとするメディカルスタッフ(医療専門職)が,患者さんと共に,それぞれの専門性をもとに,高い知識と技術を発揮し,互いに理解し目的と情報を共有して,連携・補完しあい,その人らしい生活を実現するための医療です[2].

さまざまなメディカルスタッフ(医療専門職)が,患者さんの生活の質(QOL)の維持・向上や,患者さんの人生観を尊重した療養の実現をサポートしています.

チーム医療の定義

厚生労働省は,「チーム医療とは,医療に従事する多種多様な医療従事者が,各々の高い専門性を前提に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い,患者さんの状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義しています[3].

 

チーム医療はいつから始まったのか

チーム医療として以前から実践されてきたものに「栄養サポートチーム(NST)」があります.1970年代から欧米に普及し始め,1990年後半からわが国にも導入されるようになりました.また,体位変換や姿勢,食事摂取等によって褥瘡を予防する「褥瘡対策チーム」も栄養状態との関連が深いこともあり比較的早い時期から導入されてきました[4].

日本でも,2009年8月,厚生労働省は「チーム医療の推進に関する検討会」を立ち上げ,日本の実情に即した医師と看護師等との協働・連携の在り方を検討しました[5].

その報告書に基づいて,さらにチーム医療推進会議でメディカルスタッフ(専門医療職)の協働・連携の話し合いが継続的になされ,社会保障審議会医療部会で取りまとめられ,2014年6月18日,第186回通常国会で「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立しました.これを受けて,2015年4月1日から関連メディカルスタッフ(専門医療職)の法律が改正され施行されました.

中澤[4]は,この15年間は,わが国の医療安全の在り方,チーム医療の在り方が継続的に議論され,そして一定の方向性が具体的に示されたことはチーム医療推進会議の成果であり,新たな歴史の始まりとしての転換点であったと,述べています.

チーム医療が推進されている背景には,団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題があります.医師や看護師等の数を飛躍的に増やすのが難しい中,より効率的,かつ最良の医療を提供するための方策の1つとしてチーム医療が注目されているのです.

チーム医療に関わる職種

患者さんを取り巻く医療職種として,医師,看護師,保健師,助産師,薬剤師,臨床検査技師,衛生検査技師,臨床工学技士,放射線技師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,栄養士,管理栄養士,救急救命士等,さまざまなメディカルスタッフ(専門医療職)が,チーム医療に関わっています(コメディカル参照).

チーム医療の必要性

患者さん個人によって病気の症状はそれぞれ違いがありますが,多くの方が身体的な苦痛と同時に心理的な問題や社会的な問題,精神的な問題を抱えています[2-6].

例えば,病気の再発はしないのか,薬に対する不安や退院後の食事はどうすれば良いのか,運動量はどの程度すればよいのか,または入院費の支払いが分割にできないか,仕事への復帰に対する不安や家族介護の不安等々抱える問題はさまざまです.患者さんが辛い症状や問題を乗り越えなければ,社会復帰は困難な状況であると言えます.

そこで多職種が関わり情報を共有し,連携を図りながら協力することで,多方面の専門的な立場からの手助けを行なうことができます.

チーム医療によって,患者さんは総合的に効率よくきめ細かい良質な医療を受けることができるのです.

チーム医療のメリット/デメリット

ここで,チーム医療のメリットとデメリットについて確認してみましょう.

チーム医療の利点

チーム医療は各専門家のオーバーアチーブメント(可達)を促進するもので,1人の専門家では得られないメリットをもたらしてくれるのです.[7].


1)疾病の早期発見・回復促進・重症化予防等,医療の・生活の質が向上する
2)医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減する
3)医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上する 等

チーム医療の問題点

チームワークを良好に維持するためには,各医療スタッフの能力向上に加え,情報伝達システムづくりや,充分な教育体制の構築等が課題となっています[8].


1)各医療スタッフの技量が均一化されていない
2)スタッフ間のコミュニケーションが不十分になりがち
3)チーム医療の教育不足 等

さまざまな医療チーム

チーム医療の基本的な考え方は様々な医療現場で共通するものですが,具体的な取組内容については急性期,回復期,維持期,在宅期においてそれぞれ異なるものであり,各ステージにおけるチーム医療を推進するための具体的な方策を考える共に,各々のチーム医療が連鎖するような仕組みの構築が必要です.

現在医療現場において取り組まれているチーム医療については,職種間の情報共有の方法と各職種の配置方法によって分類することができ,それぞれの医療現場の特性に応じた取組が行われています.情報共有方法と職種の配置方法によるチーム医療は下記の2つのように分類されています[3-5].

  • 多職種がカンファレンス等において,擦り合わせを行って情報を共有します(急性期医療の中核部分や回復期リハビリテーション病棟等).
  • 電子カルテやクリニカルパス等を通じて情報を共有します( 在宅医療や 急性期医療の周辺部分等).

チーム医療の取組を進めるにあたり,医療機関によって,医療関係職種等のマンパワーや周辺の人口構成等,置かれている状況が異なるため,それぞれ求められている医療のニーズに添ったチーム医療を展開する必要があります.

施設によっては基準を満たし,チームを適切に運用していれば加算となる物も多くあります。また,チームとして加算はできなくても,しっかりと管理をしていれば加算対象となるもの,加算にはならずとも,診療に必要性の高いチームもあります.

主な医療チーム

栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)

食欲が低下している患者さんや栄養状態の悪い患者さんに対して適切な栄養管理を行い,全身状態の改善,合併症の予防を目指します.

呼吸ケアチーム(RCT:Respiratry Care Team)

呼吸に問題を抱える患者さんに対して,早期に呼吸状態の改善をはかります.そのうえで,呼吸が少しでも楽になり,日常生活を過ごしやすくなるようサポートします.

精神科リエゾンチーム

精神科医,精神看護専門看護師,臨床心理士といった複数の職種から構成されており,複雑な社会・心理状態にある入院中の患者さんに対してそれぞれの専門性を活かしたチーム医療を行っています.

認知症ケアチーム

医師,看護師,作業療法士等が協力し,患者さんの混乱を少なくしてスムーズに退院できるようにサポートします.

緩和ケアチーム

余命が限られた患者さんや家族の問題に早い段階から介入して,QOL(人生の質,生活の質)を改善します.

糖尿病チーム

糖尿病患者さんの日常的な療養生活のサポートを行い,合併症(糖尿病性神経障害,糖尿病性網膜症,糖尿病性腎症等)の重症化を予防しています.

救急医療チーム(RRS:Rapid Response System)

集中治療専門のチームで,患者のベッドサイド(または必要とされるあらゆる場所)に出向き,重症化する前に兆候を発見し,介入することで予後を改善することを目指します[9].

褥瘡管理チーム

患者さんの褥瘡(じょくそう=床ずれ,皮膚の潰瘍)予防・早期発見に努め,適切な褥瘡管理によって改善・治癒を行っています.

摂食・嚥下サポートチーム

摂食・嚥下に障害のある患者さんに対して,栄養状態,食事の状態,口の中の衛生状態をチェック・評価し,多くの医療専門職との連携により治療や訓練をすることで,食べる機能の回復や肺炎を防止し,日常生活における活動性の向上を目指します.

感染症対策チーム(ICT:Infection Control Team)

病院等の医療施設で,建物内の感染症に関する予防,教育,医薬品等の管理を担当しています(病院によっては,感染防止チーム,院内感染対策チームともいう).

医療機器安全管理チーム

病院で使用する生命維持管理装置(輸液・シリンジポンプ,人工呼吸器,透析用装置,人工心肺装置等),および,検査や診断機器を総合的に管理しています.

医療安全管理チーム

医療安全対策,院内感染対策,医薬品安全対策,医療機器安全対策等を行い,事故の予防や,発生した事故の再発防止等を実施しています.

リハビリテーションチーム

患者さんが抱える問題を,▽心や体の働き・身体構造▽社会生活における活動に参加できるかどうか▽生活環境(=おもに,自宅や買い物先等,普段の生活圏内)▽社会的環境(=会社,学校,地域コミュニティー等),それぞれの側面から評価・分析し,さまざまな手段を使って早期退院・早期社会復帰を目的とします.

上記のチームの他,周産期ケアチーム,口腔ケアチーム(口腔内の衛生状態の維持),がん治療サポートチーム(がんに伴うさまざまな問題の解決)等,さまざまな新しい医療チームが誕生しており,さまざまな医療専門職(メディカルスタッフ)が,それぞれの患者さんの療養生活を支えています[11].

多職種連携(IPW: Interprofessional Work)との関係

「チーム医療」と,「多職種連携(IPW)」についてのに関係性について,整理してみましょう.

「多職種連携(IPW)」とは,前述したように(多職種連携(IPW: Interprofessional Work)参照),異なる専門職からなるチームのメンバー,あるいは異なる機関・施設が,サービス利用者(患者・家族)の利益を第一に,総合的・包括的な保健医療福祉ケアを提供するために,相互尊重,互恵関係による協働実践を行うこと,またその方法・過程です[12].

また,「チーム医療」とは,一人の患者さんに対してさまざまなスキルを持つメディカルスタッフ(医療専門職)が連携し,協働しながら取り組んでいます.それぞれが相互に各分野の専門技能を理解し,多職種とコミュニケーションを図って意思決定しています.

すなわち,「チーム医療」とは,院内における「多職種連携」という関係性なのです.

まとめ

現在,日本の医療は非常に厳しい状況に直面しており,医学の進歩,高齢化の進行等に加えて患者の社会的・心理的な観点及び生活への十分な配慮も求められており,医師や看護師等の許容量を超えた医療が求められています.

そこで,専門職種の積極的な活用,多職種間協働を図ること等により医療の質を高めるとともに,効率的な医療サービスを提供するチーム医療が推進されています[5].

しかし,チーム医療はまだ,多くの医療機関で十分に導入されていないのが現状です.医療機関の経済的な理由や人材不足,多職種間の充分な相互理解を可能にする教育環境が整っていない,リーダーシップを発揮できる,医師・看護師以外の職種が少ないこと等の理由で,実践が困難な場合も多いのです.

医療現場でチーム医療を実践するには,メディカルスタッフ(医療専門職)を十分に配置できるだけの経済的な基盤や人材確保,充分な教育環境の整備等が課題と言えるでしょう.

とりわけ,相手にも自分にも耳を傾けることができる,「傾聴」の他,相手の立場に立って相手の気持ちを理解する「共感」といった側面に加え,現在と過去の出来事を照らし合わせ,将来を予想する「先見力」などが備わっている「サーバント・リーダー」の育成が重要です[13].

おわりに

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参考文献

[1] 日本赤十字社 チーム医療の推進に関するガイドライン 第2版.
http://plaza.umin.ac.jp/~jrcce/files/pdf/2020/jrc_team_guaideline_2nd.pdf (2021/3/20
閲覧)
[2] チーム推進協議会 チーム医療とは

https://www.team-med.jp/specialists(2021/2/13 閲覧)
[3] 厚生労働省 チーム医療の推進について-チーム医療の推進に関する検討会報告書,平成22年3月19日.

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf (2020/10/1 閲覧)
[4] チーム医療の推進と歴史の転換点.中澤靖夫.公益社団法人 日本診療放射線技師会誌 2015. vol.62 no.753p2.
http://www.jart.jp/activity/ib0rgt0000002ol4-att/2015-07forword.pdf (2020/10/17 閲覧)
[5] 厚生労働省 チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集,平成23年6月
チーム医療推進方策検討ワーキンググループ(チーム医療推進会議)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ehf7-att/2r9852000001ehgo.pdf (2020/10/17 閲覧)
[6] チーム医療 医師をはじめとする多くの職員の連携と協力による「チーム医療」https://www.ajha.or.jp/guide/pdf/080821.pdf(2021/2/13 閲覧)
[7] 日経BP がんナビ「チーム医療って何?」の疑問に答えます~体も心もケアしてくれる,多職種連携チーム医療を徹底解説~チーム医療のメンバーや,メリット・デメリットについて. https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201006/100481.html(2030/10/10 閲覧」)
[8] 朝日新聞デジタル チーム医療 大学特集.

http://www.asahi.com/ad/clients/team_iryo/team.html(2021/2/13 閲覧)
[9] 日本臨床救急医学会 HP Rapid Response System (RRS) https://jsem.me/pdf/about_rrs_1301110.pdf(2021/3/7 閲覧)
[10] キャリタスアカデミー 【連載企画08】進化し続けるチーム医療の今 効率的かつ最良の医療を提供するために欠かせないチーム医療.

https://kango.career-tasu.jp/contents/academy/article08/#:~:text=(2021/2/13 閲覧)
[11] 保険診療点数調べるなら しろぼんねっと

http://shirobon.net/(2021/3/7 閲覧)
[12] 田村由美 (2010)「なぜ今 IPW が必要なのか」 看護実践の科学 35(10):41- 47.
[13] サーバント・リーダー「10の特性」あなたはいくつ該当するか?.
https://president.jp/articles/-/15523?page=1(2021/3/7 閲覧)

目次

    執筆者について

    黒田 美香
    黒田 美香
    群馬県在住の元看護師。総合病院勤務や訪問看護勤務を経て教育に興味を持ち、子育てをしながら修士課程を卒業。高校や専門学校、短大、大学等で看護や介護の教員経験を積む。現在は、乳がんにて闘病しつつ、執筆活動中。