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小児等への服用方法・薬剤と飲食物の注意点について

執筆者:鈴木絢乃 薬剤師セールスコピーライター

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「子供が薬を飲んでくれない」「薬はどのようにして飲ませたらいいですか?」 以前、小児科の門前薬局に勤務していた際も、現在勤めているドラッグストアで市販薬をお勧めする際にも、よくこうした相談を受けます。

子供に薬を服用させるのに苦労している親御さんは多いです。 そこで今回は子供の薬について解説していきます。

 

※本記事は、医療従事者の方に向けた記事です。一般の方がお読みになる場合は、最終的に薬を処方してくれた医師や薬剤師に確認をしてください。お子様の状態等に応じても対応が異なる場合があります。

「小児等」の範囲と子どもならではの注意事項

薬剤の添付文章には「小児等」という一言で、幅広い年齢の子供たちがまとめて記載されていることが多いですが、小児等とは具体的に、新生児、乳児、幼児、小児の4つが含まれています()。

  • 新生児:出生後4週未満の児
  • 乳児:生後4週間以上、1歳未満の児
  • 幼児:1歳以上、7歳未満の児
  • 小児:7歳以上、15歳未満の児

子供の薬剤については、こうした年齢の区分や体重などでも薬剤の用量を調整する必要がある場合もあります。
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服用時間について

新生児〜幼児は満腹の場合、薬を飲ませようとしても服用したがらないことが多く、たとえ服用させたとしても、食べ物と一緒に吐き戻しをしてしまうこともあります。そのため、医師から特別指示がある場合を除き、服用は哺乳前や食前に済ませるのがお薦めです。
1日3回処方の場合は8時間毎、1日2回処方の場合は12時間毎が理想ではありますが、2〜3時間のずれは許容範囲です。よく保護者の方から相談をいただくのが「保育園では薬を飲ませてくれないため、昼の分が服用できない」というものです。保育園の時間や睡眠など生活リズムによって変動しますが、おおよその時間で服用しても問題ありません。薬剤にもよりますが、例として朝8時、保育園帰宅後の16時、就寝前の21時のような服用時間でも可能です。
もう一つ保護者の方から多かった質問が「1日3回処方の薬の場合、昼と夕の2回分を同時に服用してもいいか」です。同時に服用しないように一言伝えておくといいでしょう。

新生児・乳児・幼児への服用に対しての注意点

薬は、寝かせたままの姿勢では、誤嚥を起こす可能性があります。抱っこまたは上体を起こした状態で飲ませるように注意を伝えておくといいでしょう。また、薬だけを飲ませるのが難しいと感じ、ミルクやご飯に混ぜようとする保護者もいますが、薬を混ぜることにより、ミルクやご飯の味が変わってしまい、今後子供がミルクやご飯を拒否する可能性があります。混ぜる場合は、ゼリーやアイスクリームなど、今後拒否しても困らない食べ物にした方がよいです。しかし、薬と相性が悪い食べ物もあります。それについては後述します。

薬の剤形と服用方法について

小児用薬の代表的な剤形には粉薬とシロップ剤があります。
それぞれの服用方法について解説していきます。

粉薬の服用方法について

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粉薬はそのまま服用させるとざらつきや薬によっては苦味があるため、子供はなかなか服用してくれないことが多いです。そうした子供に向けた粉薬の服用方法をいくつか紹介します。

粉薬を水に溶かして服用させる

子供が飲める少量の水に粉薬を溶かして、スプーンやスポイトで飲ませてみましょう。
スポイトの場合は、口の端から頬の内側に入れるようなイメージで少量ずつ入れていきます。また乳児などスポイトで服用しない場合は、哺乳瓶のニプルを用いることも可能です。ただし哺乳瓶のニプルを薬と思い、今後吸ってくれなくなる可能性もあるため、最終手段で行うことをお勧めします。

ペースト状、だんご状にして服用させる

1〜2滴の少量の水を薬に入れて練り、ペースト状、だんご状にします。
そのまま、子供の上顎や頬の内側に塗布します。その後すぐに水を飲ませるようにします。水を飲ませることにより、口の中に残った薬で苦味が出るのを予防することができます。

お薬服薬ゼリーを使用する

お薬服薬ゼリーは、服薬のために開発されたゼリーです()。容器やスプーンにゼリーを乗せ、その上に薬を入れてから、ゼリーで薬を包みます。
味も何種類かあり、子供が好きな味を選択できるため服用させやすいでしょう。なお、抗生剤は特に苦味が出やすく、酸性の場合は苦味を増す可能性があるためチョコ風味がお勧めです。

シロップの服用方法について

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シロップの場合は粉薬を水で溶かして服用させるのと同様に、スプーンやスポイトを用いて服用させましょう。
シロップを混ぜる際は、勢いよく振ると泡立ってしまう水剤もあるため、容器を上下逆さまにしてゆっくり振り混ぜるようにしてください。

薬剤と飲食物について

薬の苦味で子供が服用を拒否する場合は、水以外の飲食物と一緒に服用させる方法もあります。本稿前半で、ゼリーやアイスクリームなどに薬を混ぜて服用させる方法を記載しましたが、薬と混ぜる際に相性が良い飲食物と悪い飲食物がありますのでそれぞれ紹介します。

相性が良い飲食物

果汁入り酸が含まれていないアイスクリーム、チョコレート、練乳、プリン、ココアパウダーなどは粉薬と相性が良いものです。
ただし、粉薬によっては溶けると薬そのものの苦味が出る場合もあるため、混ぜて服用させる場合は、粉薬と飲食物を服用直前に混ぜ、すぐに服用させるようにしましょう。

たとえばインフルエンザの時に処方されるタミフルDSは苦味もあり、子供に服用させにくい薬です。タミフルDSにはココアパウダーかチョコレートアイスを混ぜて服用させると良いでしょう。

相性が悪い飲食物

ミルクやごはんには基本的に薬を混ぜないようにしてください。ミルクやごはんは子供の栄養源ですが、薬を混ぜると、今後拒否する可能性があるためです。
また、オレンジジュースなどの柑橘系ジュースやスポーツドリンク、ヨーグルトなどの酸性飲料と一緒に服用すると苦味が発現する薬剤があるため注意が必要です。代表的な薬剤にマクロライド系抗生物質があります。実際マクロライド系抗生物質であるクラリスDSの添付文書に次のような記載があります()。

酸性飲料(オレンジジュースやスポーツ飲料)で服用することは避けることが望ましい。有効成分の苦味を防ぐための製剤設計が施してあるが、酸性飲料で服用した場合は、苦味が発現する場合がある。


同様に、マクロライド系抗生物質と酸性薬剤のムコダインDS(カルボシステインDS)とを一緒に服用すると苦味が発現してしまうため、別々に服用させるようにしましょう。

ハチミツは薬自体との相性は悪くありませんが、1歳未満の子供には厳禁です()。生後1歳未満の乳児は、腸内環境が成人と異なり、ハチミツなどボツリヌス菌に汚染されているものを摂取した場合、毒素が産生され、乳児ボツリヌス症を発症することがあるためです。生後1歳以上になれば、腸内細菌が整うため、ハチミツを避ける必要はなく、薬の服用時に混ぜて使っても問題ありません。

まとめ

今回、小児等の薬剤・服用方法について解説していきました。
子供の場合、薬をそのまま服用させることが困難な場合が多く、困っている保護者も少なくありません。子供に薬を処方する際には、今回解説した方法で服薬指導を行い、少しでも楽に服用できる子供が増えればと思います。

おわりに

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出典

(1)厚生労働省 医薬・生活衛生局安全対策
https://www.pmda.go.jp/files/000218448.pdf
(2)株式会社龍角散 おくすり飲めたね
https://www.ryukakusan.co.jp/okusurinometane
(3)大正製薬株式会社 クラリスドライシロップ 10% 小児用
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/400059_6149003F1031_1_36.pdf?_fsi=yoYGsTgO
(4)消費者庁 ハチミツによる乳児のボツリヌス症
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001/

目次

    執筆者について

    鈴木絢乃
    鈴木絢乃
    千葉県在住の薬剤師セールスコピーライター。 6年制課程薬学部を卒業後、ドラッグストアの調剤薬局にて勤務。その後調剤薬局に転職後、現在はドラッグストアの調剤薬局の管理薬剤師として勤務。結婚を機に、ワーク・ライフ・バランスを考えるようになり、セールスコピーライターの道へ。 今夏には出産予定。「どんな状況でも自立した女性」をモットーに薬剤師兼ライターとして活動中。
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