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診療看護師(NP)と多職種の”Collaboration”が医療の未来を切り拓く~第7回日本NP学会学術集会~

 

2021年11月19日〜21日の3日間、第7回日本NP学会学術集会が開催されました。本学術集会を運営する日本NP学会は、診療看護師(NP)の実践・教育・研究活動を通して、人々の生活と健康に寄与することを目的として2015年に設立されました。日本NP学会学術集会は、2015年から毎年1回開催され、7年目を迎えた今回は「『Collaboration』〜診療看護師(NP)の真価を問い、新たな価値を創造する〜」をテーマに繰り広げられました。その中から注目を集めたプログラムのサマリーを中心にお伝えします。

 

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ニューノーマルな学術集会の幕開け

2021年11月。日本国内ではCOVID-19の1日の感染者数が100人前後で推移し、街はかつてのにぎわいを少しずつ取り戻していた頃でした。開催地まで出向き、発表・参加し、宿泊する、というのがこれまでの学会セオリーでしたが、COVID-19の流行によりWEB開催またはWEBと現地のハイブリット開催がニューノーマルとなりつつあり、第7回日本NP学会学術集会も、現地開催を目指し準備を進めていましたが、感染状況を鑑みてWEB開催に変更しての開催となりました。多くの参加者を待ちわびていたオープンしたばかりの出島メッセ長崎の会場には、運営を担うメンバーや少数の登壇者のみが集いました。

 

CE5449CC-37EB-4516-A8D6-9DE329A29851開会前に本会の成功を願い円陣を組む本田会長と運営委員会の皆さん

 

長崎で育ち、診療看護師(NP)として今も長崎で働き続ける会長の本田和也さんは開会のあいさつで、最も伝えたいことは「診療看護師にかける思いと情熱」だと繰り返し訴えかけました。8年間に渡り診療看護師(NP)として働く中で感じた「診療看護師(NP)を社会に浸透させたい」「市民や医療スタッフに診療看護師(NP)が地域に役立つ存在だと理解してもらいたい」という思い、そして「コラボレーションによって広がるであろう未来への期待を持ってほしい」と話し、本会は幕を開けました。

 

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開会のあいさつをする会長の本田和也さん

多くの視聴者を集めた、診療看護師(NP)が実践力を高められる多彩なプログラム

診療看護師(NP)が社会に認められるために、臨床・政策などさまざまな視点で診療看護師(NP)の役割や今後の可能性についてディスカッションする企画が開催され、3日間で20本のシンポジウムやパネルディスカッション等が行われました。

 

診療看護師(NP)が医療に介入することで、どのようなアウトカムが得られているのかは、皆さん、関心が高いのではないでしょうか。その中から診療看護師(NP)の介入によって患者のアウトカムが向上したことを示したものを2つご紹介します。

<シンポジウム4:災害医療における診療看護師 (NP) の新しい価値創造>


本シンポジウムでは、診療看護師(NP)のシンポジスト4人が登壇し、災害時の医療提供において、以下7つの能力を持つ診療看護師(NP)が医療現場全体をコーディネートする役割を担うことで、混乱する現場をうまく機能させられることが評価され、長崎県でDMAT派遣の際に必ず診療看護師(NP)を含むようになったことなどが紹介されました。

 

NPに必要とされる7つの能力

1.包括的な健康アセスメント能力
2. 医療的処置マネジメント能力
3.熟練した看護実践能力
4.看護管理能力
5.チームワーク・協働能力
6. 医療・保健・福祉システムの活用・開発能力
7.倫理的意思決定能力

 

その理由として、災害時の医療は平時の医療の延長線上にあると考えられることから、平時から横断的に活動している診療看護師(NP)は、部署・部門の壁を超えてマネジメントする能力が高いことが挙げられました。診療看護師(NP)は、臨床推論力を活用し患者の緊急度と重要度を判断する高度看護実践能力や、医師が対応できない時は救護所・避難所で一定レベルの診療に従事できる能力(診療看護師(NP)が提供できる一定レベルの診療の範囲、程度に関しては,診療看護師(NP)の活動実績、社会のニーズ等を踏まえ、医療界の合意を得て、決定していく方針である(1))、また、チーム医療・地域医療のキーパーソンとして全体をマネジメントできる能力などを有するため、災害時にCSCA(メディカルマネジメント)を実践可能であると、これまでの実績を示しながら考察されました。

 

C:Command and Control (指揮と連携)
S:Safety (安全確保)
C:Communication (情報収集伝達)
A:Assessment (評価)

 

しかし、医療従事者や市民への認知度の低さや、災害活動の介入効果のアウトカムがないなどの課題も示され、今後これらを解決していく必要性が共有されました。

また、ディスカッションでは、診療看護師(NP)制度の創設者である東京医療保健大学名誉教授の草間朋子さんが発言し「今後診療看護師の法制化を目指す上で、災害医療という緊急事態において私たちの能力が発揮できることを社会に示すために、1つ1つの活動『エピソード』を国民に伝えていくことがとても重要」だと述べました。診療看護師(NP)は、自分たちが行っていることには研究を通してエビデンスを創っていきたいものの、臨床家である彼らにとって実現までのハードルは高い現状があります。それを理解した上で「ここで行ったような発表をエピソードやエビデンスとして学術誌や商業誌に出していくなど、広く知らせていく広報が必要ではないか」と視聴者に訴えかけました。

<シンポジウム3:地域におけるCollaboration>

 

コロナ禍において、医療のひっ迫が連日報道されたことは記憶に新しいでしょう。そのような状況下で地域住民の健康を守るクリニックに勤務する診療看護師(NP)の矢尾知恵子さんは、医師と協働し発熱外来の効率的な運営を実現させたことを報告しました。

 

そのようなプライマリケアにおける診療看護師(NP)の活動について「Co-management」という概念を用いて考察し、診療看護師(NP)と医師が共同管理することで、①推奨されるケアガイドラインの順守が高まりケアの質が向上すること、②従来の単一の医師によるケア提供モデルと同等またはより優れていること、という研究結果を紹介し、診療看護師(NP)と医師が患者を共同管理することの有用性について自身の実践の裏付けを行いました。

 

診療所における診療看護師(NP)は重症度や複雑性を勘案しながら、自律して医師と共に患者を協働マネジメントし、1人の患者の健康管理に必要なすべての事柄に関する責任を医師と共有しています。その看護実践は、急性期~慢性期治療、薬剤管理、検査、文書作成など、煩雑で多様な業務を担い、責任をもって実践することで医療の質を上げ、ひいては診療看護師(NP)の価値の具現化につながるのではないか、と今後の可能性の高まりに期待を寄せました。

これからの医療になくてはならない存在として問われる真価

以上の2セッションを含めた全20セッション、さらに一般口演93演題がオンデマンド配信された本会には、国内外から過去最高の1,021人が参集し、参加者たちの熱量が溢れていることが画面からもうかがえました。

2011年に日本NP協議会の認定資格として養成が始まり、教育大学院の増加とともにその数は2022年3月現在、670名にまで広がりをみせ、臨床では多くの診療看護師(NP)が着実に結果を生み出しています。

一方で、診療看護師(NP)は協議会の認定資格であり、国家資格に向けた活動は続いているもののいまだ認められていません。さらに、名称については日本看護協会のホームページに「ナース・プラクティショナー(仮称)」と記載され、議論の只中にあることから、その立ち位置に不安定な部分があることは否めません。

発信とアウトカムの提示に課題

全国で診療看護師(NP)が100人にも満たなかった2014年にNPの資格を取得し、そのパイオニアとして走り続ける本田さんは、本会を終えて診療看護師(NP)が社会から評価されるために、発信とアウトカムの提示に課題が見えたと振り返りました。

診療看護師(NP)のアウトカムを社会に示す方法として、活動を診療報酬に反映させることが挙げられるものの、それが診療看護師(NP)の真価なのかと考えると、そこだけでは示しきれない部分も多くあると本田さんは言います。

例えば、医療が円滑に進むよう診療看護師(NP)が現場をコーディネートした結果、チームワークが活性化し、在院日数が短くなったり不必要な検査を減らせることにつながったというデータにも目を向ける必要があるのです。それらを積極的に社会に示し、診療看護師(NP)が市民一人一人の健康回復・健康増進、そして医療経済に貢献できることを研究者やメディアなどとコラボレーションして発信することも診療看護師(NP)に必要な役割の1つだと言えるでしょう。

コロナ禍というこれまで経験したことのない事態に直面し、医療の偏在やマンパワーの不足がある時に、診療看護師(NP)が持つ医学の視点と看護の視点を結び付けた実践は今後さらに需要が高まると考えられ、社会から存在意義を認められることにもつながっていくと本田さんは期待しています。

診療看護師(NP)とのCollaboration

今後、診療看護師(NP)が地域、クリニック、医師、看護師、薬剤師、研究者、教育現場、企業、海外など、どこで・誰と・どのようにコラボレーションするかによって、可能性は無限に広がっていくことでしょう。一人一人の診療看護師(NP)が紡ぐ1つ1つの看護実践が、今後の医療や社会を動かすエネルギーになると期待されます。

過去最高となった参加者の数は、それだけ多くの人が診療看護師(NP)の活躍や今後の可能性に関心を持ったことの表れでもあります。本田さんの情熱と思いは、第8回学術集会を主催する藤田医科大学保健衛生学部講師/診療看護師(NP)の酒井博崇さんへと引き継がれました。2022年11月11日〜13日は「Diversity&Specialty」をテーマに再び熱い3日間が繰り広げられることでしょう。

 

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おわりに

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出典

(1)日本NP教育大学院協議会ホームページ

 

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    執筆者について

    Epigno Journal 編集部
    Epigno Journal 編集部
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