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専門医療機関連携薬局が担う機能と役割 〜がん患者さんの薬物療法に貢献する薬局〜

 

薬局にはその機能や形態によって様々な呼び名があり、公的保険が使えることを示す「保険薬局」、役割の一つを示す「健康介護そうだん薬局」、形態を示す俗称としての「調剤薬局」や「漢方薬局」、認定を受けて名乗ることができる「健康サポート薬局」、「地域連携薬局」、「専門医療機関連携薬局」などがあります。


これらは1薬局につき1つしか適用されないわけではなく、例えば「地域連携薬局かつ専門医療機関連携薬局」など、複数の名称を併せ持つ薬局も存在します。


本稿では近年、その機能と役割について注目されている「専門医療機関連携薬局」についてご紹介します。

専門医療機関連携薬局とは

専門医療機関連携薬局はがん患者さんの薬物療法などで病院と密な連携ができる薬局です。また病院との連携のみならず、がん領域において、地域の薬局の中で中心的な役割を果たします。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法と略記)で規定され、2021年8月に認定が始まりました(1)。2022年6月末までに全国で112軒の薬局が認定を受けています(2)。


全国で112軒なので、まだあまり馴染みがないかもしれませんが、日本薬剤師会は全国で800軒を目標とし、厚生労働省は二次医療圏(全国で335区域)に少なくとも1軒が必要だとしており、今後も増えることが予想されます。


専門医療機関連携薬の業務と活動

ここでは専門医療機関連携薬局が行っている具体的な業務や活動についてご紹介します。

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がん患者さんに対する質の高い服薬指導

専門医療機関連携薬局には病院で研修を受け、がんの薬物療法について高度な知識を持つ薬剤師が在籍します。院内で投与される抗がん剤の知識を持ち合わせるため、薬局で調剤する薬(院外処方された薬)と院内で投与された薬を合わせて考えることができます。


例えば、胃がんや大腸がんに対する治療法にCapeOX療法(別名:XELOX療法。カペシタビン+オキサリプラチン)があります。多くの場合、院内でオキサリプラチンの点滴を受け、薬局でカペシタビンを受け取ります。患者さんは病院でCapeOX療法の副作用の説明を受けても、緊張などで十分に理解できないことがあります。
この場合、専門医療機関連携薬局でカペシタビンの副作用(手足症候群など)だけを伝えても不十分です。
オキサリプラチンの副作用(吐き気や末梢神経障害など)も併せて伝えることで、その兆候が出た時に適切な対応ができるようになり、服薬継続率の向上に繋がります。
抗がん剤の治療では、相対用量強度(計画量に対する実際の投与量)が重要であるため、服薬継続率が上がれば、治療効果も上がります。


なお専門医療機関連携薬局であっても、薬剤師全員が病院での研修を受けているわけではありません。ただ、誰が服薬指導を行っても質を担保できるように薬局内での研修や情報共有を行っています。


医療機関との密な情報共有

特にがん患者さんにおいて、薬をきちんと飲んでいるか、副作用が出ていないかなどの情報を専門医療機関連携薬局と病院で共有します。
もちろん、処方箋を持参するのは診察の後であるため、薬をお渡しする日の患者さんの状態は医師も把握しています。
薬局では服薬指導時の体調確認に加え、必要に応じて服薬期間中のフォローアップ(次回の診察までの間の体調や服薬状況の確認など)を行い、その情報を病院に伝えます。薬局からの情報によって、次回の診察時に効率的に患者さんの体調確認ができます。


専門医療機関連携薬局の認定を取得および維持するためには、薬局に来たがん患者さんの半数以上の情報を病院と共有することが必要要件となっており、薬局としては日々、情報共有に取り組んでいます。


他の薬局の薬剤師の資質向上

専門医療機関連携薬局は自分の薬局のことだけでなく、地域の他の薬局に所属する薬剤師の資質向上も担います。
資質向上の方法の一つに研修会の開催があり、薬局単独で研修会を主催することもあれば、連携する病院と共催することもあります。研修内容は、がんの薬物療法に関する専門的な知識だけでなく、患者さんが安心して医療を受けることができるようにコミュニケーションに関することなど、幅広い内容で行われます。


専門医療機関連携薬局になるための基準

専門医療機関連携薬局の認定を受けるには様々な基準を満たす必要があります(3)。こちらでは、その一部を紹介します。


がんに対して専門性の高い薬剤師

勤務する薬剤師の中に、日本医療薬学会が認定する「地域薬学ケア専門薬剤師(副領域:がん)」または日本臨床腫瘍薬学会が認定する「外来がん治療専門薬剤師」のどちらか又は両方がいる必要があります。


どちらの専門薬剤師になる場合でも、薬剤師として実務経験、患者さんをサポートした症例報告、病院での研修、学会発表などの要件を満たした上で認定試験に合格する必要があります(4)(5)。認定取得の難易度を比較することはできませんが、「地域薬学ケア専門薬剤師(副領域:がん)」の認定を取得する場合、5年間に渡って、月に3~4回、病院での研修を受ける必要があり、取得までの道のりが長くかかります。


研修期間などの関係で、2022年5月時点では「地域薬学ケア専門薬剤師(副領域:がん)」は全員が暫定認定者の状態ですが、「外来がん治療専門薬剤師」は正式な認定者が誕生しています。


プライバシーへの配慮

体や病気のことを話すため、どこの薬局でもプライバシーへの配慮を行っていますが、専門医療機関連携薬局はがん患者さんが多いこともあり、より高度な配慮が求められます。


待合室にいる他の患者さんに会話を聞かれないようにするため、服薬指導のための仕切られた場所や個室を設置する必要があります。


その他の要件

専門医療機関連携薬局が担う機能と役割の項で記載した「病院との密な情報共有」や「地域の他の薬局の知識の向上」なども認定要件に含まれます。


地域連携薬局との違い

専門医療機関連携薬局と同時期にできた制度に「地域連携薬局」があり、その認定を受けるのにも様々な要件を満たす必要があります。専門医療機関連携薬局は病院と連携してがん患者さんの薬物療法を向上させることが目的なのに対し、地域連携薬局は地域医療への貢献を目的としています。


例えば、入退院や在宅療養の際には医療機関や他の薬局と連携して、患者さんが適切な薬物療法を受けられるようにします。地域の医療・介護の課題を把握し、対応できるようにするため、地域連携薬局の認定要件には地域ケア会議への参加なども含まれています。


専門医療機関連携薬局の今後の可能性

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専門医療機関連携薬局と病院の情報共有について、患者さんの状態を病院に伝える報告形式が主でしたが、認定開始から1年近く経ち、提案形式が見られるようになってきたという声があります。


例えば、一部の抗がん剤には手足症候群という副作用があります(6)。報告形式だと「電話で状態を確認したところ、手にピリピリするような痛みが出てきたとのことで、手足症候群の兆候かもしれません。手の外観に異常はないようです」などの内容になります。提案形式だと「保湿剤を【1日2回 手足に塗布】という用法で処方して頂いていますが、手の平が乾燥気味でもその回数を厳守しているようです。次回の処方では塗布回数を増やすことをご検討頂けますでしょうか」などになります。この提案は、実際筆者の知人の薬剤師が行ったことがあるもので、次の処方箋では「1日3~4回塗布、手を洗う度に塗っても可」という用法に変更され、その後、患者さんの手の平の状態は良くなっていったとのことです。


なお、専門医療機関連携薬局は現在のところ「がん」のみが対象となっていますが、薬機法では「がんその他の傷病の区分ごとに専門医療機関連携薬局を認定すること」になっています。今後、がん以外の傷病について、患者さんや医療関係者のニーズに応じて検討されていく予定であり、対象傷病が増えれば、それに合わせて専門医療機関連携薬局も増えていくと考えられます。


まとめ

がん患者さんの薬物療法に貢献している専門医療機関連携薬局ですが、病院側から患者さんに対して、薬を受け取る薬局を指示することはできない規定になっています(保険医療機関及び保険医療養担当規則)(7)。一方で、患者さんに専門医療機関連携薬局の一覧(都道府県ごとに一覧が公開されています)をお見せして、患者さん自身に薬局を選んでいただくことは療養担当規則の規定に違反しません。ただしその際、一覧から薬局を選ぶことを強いないように留意する必要があります。


なお、専門医療機関連携薬局は、病院との連携や院内で行われる治療への知見もあるため、がん以外の患者さんにおいても一定以上の対応が期待できます。ぜひ専門医療機関連携薬局との連携を活用いただき、患者さんへよりよい治療を届けるのに役立てて頂ければ幸いです。

おわりに

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出典

(1)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第六条の三(専門医療機関連携薬局)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145

(2)専門医療機関連携薬局数(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakkyoku_yakuzai/index.html

(3)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 第十条の三(専門医療機関連携薬局の基準等)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000100001_20220401_503M60000100133

(4)一般社団法人日本医療薬学会「地域薬学ケア専門薬剤師」認定制度規程
https://www.jsphcs.jp/nintei/cont/c-kitei.pdf

(5)一般社団法人日本臨床腫瘍薬学会「外来がん治療専門薬剤師」認定規則
https://jaspo-oncology.org/senmon/?action=common_download_main&upload_id=5323

(6)重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群 厚生労働省(令和元年9月改定)
https://www.pmda.go.jp/files/000240132.pdf

(7)保険医療機関及び保険医療養担当規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015

 

 

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    執筆者について

    崎野 健一
    崎野 健一
    東北医科薬科大学を卒業後、薬局薬剤師、病院薬剤師を経て、現在は医薬品卸である(株)バイタルネットで勤務。また2010年以降、東北大学薬学部の非常勤講師としてセルフメディケーション学などの講義を担当。宮城県在住。